みをつくし料理帖の最終巻である『天の梯(そらのかけはし)』が発売されたのが、2014年8月18日。
約4年の歳月を経て、やっと、やっと読むことができた
主人公・澪(みお)を含む登場人物たちのその後の物語。
面白くないわけがない!涙しないわけがない!!
そう思いながら手に取った特別巻の『花だより』。
やっぱりこの本の中には優しさと、ちょっぴりの切なさと、美味しそうな香りが詰まっていました。
この記事では『花だより』の感想と、いつもの本とは違うおまけのことについて書いています。
まだ『花だより』を読んでいない方は、ネタバレを含んでいますのでご注意ください。
そもそも『みをつくし料理帖』シリーズを読んでいない!というあなたは、これを機に読むことを強く、強くオススメします!
全巻セット↓
一巻目↓
その後の物語『花だより』のあらすじ
澪が大坂に戻ったのち、文政五年(一八二二年)春から翌年初午にかけての物語。
店主・種市とつる家の面々を廻る、表題作「花だより」。
澪のかつての想いびと、御膳奉行の小野寺数馬と一風変わった妻・乙緒との暮らしを綴った「涼風あり」。
あさひ太夫の名を捨て、生家の再建を果たしてのちの野江を描いた「秋(しゅう)燕(えん)」。
澪と源斉夫婦が危機を乗り越えて絆を深めていく「月の船を漕ぐ」。
シリーズ完結から四年、登場人物たちのその後の奮闘と幸せとを料理がつなぐ特別巻、満を持して登場です!
最終巻で澪と野江ちゃんが大坂に着いたのが1818年。ちょうど年号が文化から文政に変わった頃のこと。
『花だより』で描かれるのは、1822年(文政5年)から翌年の初午にかけてなので、ちょうど、最終巻から4~5年後についての物語です。
種市さんもいつの間にか74歳になってますね。みんなが元気で健やかで本当に良かった!
それでは、各話の感想です。
1.花だよりー愛し浅利佃煮ー
表題にもなった「花だより」。最後のどんでん返しに笑うとともに、種市たちは澪に会えないの??とショックになりました。

最後の話「月の船を漕ぐ」まで読んで、ホッとしました
種市さん、清右衛門先生、坂村堂さん、りうさん御一行はもちろんのこと、ご寮さんやおりょうさん、ふきちゃんに健坊、太一ちゃん(書いてたらキリがないのであとは省略…)
みんなの様子が知れて、そしてみんなが相変わらずで嬉しかったです。
また、易者の水原東西が出てきたのには驚きでしたが、今でも自身が「雲外蒼天」と占った少女(澪)のことを気にかけてる様子に心が温かくなりました。
あと、太一ちゃん(もう15歳!)が書いた、美緒さんたちも含めたみんなの絵。それを見るであろう澪と源斉先生を思うと、じんわりきますよね。
清右衛門先生が種市に言った言葉
「そのうち、そのうち、と思う間に、ひとの寿命など尽きてしまう」
大切な人を亡くした清右衛門先生の言葉がいつも以上に身に沁みました。
2.涼風ありーその名は岡太夫ー
澪のかつての想い人、小松原様のその後が知れるお話「涼風あり」
小松原様、いや小野寺数馬の妻、乙緒(いつを)目線で書かれています。
読むまでは、小松原様にはずっと澪のことを想っていて欲しいという私の勝手な願いから、妻である乙緒のことなんて知りたくない、なんて思っていたのですが、、、
早帆も気づかなかった、小松原様の澪へのとてつもなく深い愛情に、乙緒が気づいた辺りから涙が止まりませんでした。
だからこそ、最後に「笑わぬ姫君」改め「能面」の乙緒が心からの笑みを湛えるシーン、本当に良かったです。
以前、早帆が澪に「兄もまた澪さんに抱いたような思慕ではないにせよ、夫婦として幸せになる道を模索しているように思います」と言っていたように、
惚れて惚れぬいて夫婦になったわけではないけれど、小松原様と乙緒が、二人ならではの接し方で、この先もきっと幸せに暮らしていくことを想像すると、心がじんわりと温かくなりました。
相変わらずまっすぐで素直な早帆。息子である数馬と乙緒がいずれこうなることを予見していた母の里津。どちらもやはり素敵でした。
3.秋燕ー明日の唐汁ー
吉原のあさひ太夫が、身請けされ”野江ちゃん”となった後のことを描いた「秋燕」
大坂でのその後の生活についてはもちろんですが、何より、あさひ太夫と又次の吉原でのことが知れる貴重なお話でした。
想像していた以上に、苦しく生死の境のようなギリギリのような暮らしをしていた又次。そんな彼が最後に「つる屋」でお客たちやつる屋の家族のような面々と温かく暮らせたことを思うと、涙せずにはいられませんでした。
共に地獄を見て、そんな中でも生きることを諦めなかったあさひ大夫と又次の絆は、恋愛とかそんなものを超えた、とても深い絆で結ばれていたんですね。
そのすべてを背負っての辰蔵さんと唐汁…。野江ちゃんが共に生きていく伴侶を見つけられて本当に良かったです。
そして、摂津屋さん。彼もまたずっと野江のことを深い愛情で見守っていたんですね。澪と摂津屋さんが出会ったのは必然だったのだと気付きました。
4. 月の船を漕ぐー病知らずー
お待ちかね、主人公・澪と伴侶となった源斉先生のその後を描いた「月の船を漕ぐ」
相手の悩みを知って助けになりたいと思うのに、自分の辛さは相手に隠す、似た者同士の源斉先生と澪。
そんな二人にそれぞれ訪れた窮地。とくに人の生き死にに関わる源斉先生のそれは、辛く悲しいもので、奈落の底の底にいる状態。
さらには大切な伴侶である澪が悩んでいるのに助けてあげられない源斉先生の葛藤、澪が心を込めて作る料理を食べられない辛さ…読んでいて胸が苦しくなりました。
そんな源斉先生を救うものは、やはり「食」。
食は食でも、豪華な食や栄養たっぷりの食ではなくて、「自分の根底を作った食」
人が心から美味しいと思うものは、味だけではなくて記憶やその時の思いも含めてのものなんですよね。
久しぶりに自分が作った料理を食べてくれるばかりかお代わりを頼まれて、台所で隠れて泣く澪。二人の歯車がカッチリ合った気がして、とても嬉しかったです。
澪には、どんなときも信じて支えてくれる源斉先生の母・かず枝と、澪を案じいつも助けてくれる心強い味方の野江ちゃんがいて、本当に良かった…!
そして、源斉先生を救った味噌汁から得たヒント「病知らず」。
そう、最終巻の巻末に載っていた料理番付で、西の大関となった「みをつくし」の料理名です。
あの番付は、文政11年とかなり先を描いたもの。これから約5年を経て、これぞ!という料理になっていくんでしょうね。



簡単に感想を書くはずが…長々と語ってしまいました
みをつくし料理帖の特別巻の「その後」は出ない
特別巻『花だより』を読んだら、やっぱり思ってしまった「その後がまた見たい」という気持ち。
最終巻『天の梯』の巻末の料理番付に載ってあった「日本橋柳町一柳改め天満一兆庵」の文字。
「一柳」が「天満一兆庵」と名を変えることを示唆しています。その経緯だって知りたいし、みんなの様子がまだまだ知りたい!!
おそらく、あなたもそう思っているのではないでしょうか?
ただ残念ながら、今回の『花だより』の巻末、みをつくし瓦版にこのように書かれています。
【りうの質問箱】
質問:続編の予定は?
回答:こうしたお問い合わせを頂戴する度に「何て幸せなことだろう」と思いますし、作者冥利に尽きます。登場人物たちに愛情を注いで頂いたことに心より感謝いたします。名残惜しいのは私も同じですが、この特別巻ののちは、皆さまのお心の中を、澪たちの住まいとさせてくださいませ。
つまり、続編は出ないということですね。
……悲しいです。
だけど、作者の髙田郁さんがそう決めたのなら、それがベストということ。
ここから先は、心の中でみんなの幸せを願おうと思います。
これほどまでに、登場人物が心に住み、登場人物たちの幸せを願わずにはいられないお話に出会ったのは初めてです。
ドラスティックな出来事はもうなくていいから、ただみんなの暮らしを覗いていたい、私にとってみをつくし料理帖はそんな存在です。
“おまけ”にあなたは気付いた?
この『花だより』、いつもの本にはない”おまけ”がありましたね。
1.本の帯が…!
本を買ったときについてくる帯に澪たちのイラストが書かれているのですが、何とそれは高田郁さんが書いたものなんです!
絵までうまいとは…!!
特に驚いたのが、そのイラストが、本を読んで私が想像していた澪や種市、野江ちゃんそのままだったこと。乙緒の姿には笑っちゃいましたが(笑)
まだ見ていなかった方はぜひチェックしてみてください😊
2.プレゼント企画
『花だより』のカバー折り返しに応募券がついていて、それを送ると「花だより」特製記念切手シートか「高田郁作品」特製ブックカバーが抽選で当たるプレゼント企画があります。
本の帯に詳しく書いているので、応募してみてくださいね。私ももちろん応募します!!
※2018年10月31日当日消印有効
3. 裏表紙の絵
いつもは、本の裏表紙にはあらすじが書かれているのですが、『花だより』には書かれておらず(裏の折り返し部分に書かれています)絵があるのみです。
本を読む前に見てこの絵は何だろう?と思っていましたが、一話目の「花だより」を見て納得。これは確かに素晴らしい景色ですね。
『花だより』を読んで…
みをつくし料理帖のその後を描いた特別巻『花だより』を読んで、またこの本を好きになりました。
これを読んだ上で、また1巻から読むともっともっと楽しめること間違いなし!ですね。
(6巻・7巻あたりは心が苦しくて読むのを躊躇してしまう気持ちもありますが…)
読めば読むほど、その後のその後が知りたくなるし、ふきちゃんが大きくなった頃のスピンオフとか、天満一兆庵に名前を変えたくだりとか、まだまだずっと読み続けていたい気持ちはあります。
ただ、高田郁さんが続編はないと仰っているので、あとは私の心の中で楽しんでいきたいと思います。
この本に出会えて良かった、そんな風に思わせてくれる作品。
その後を書いてくれた高田郁さんへのラブレターにかえて終わりたいと思います。
あなたの感想もぜひ教えてくださいね😉




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