
ここ数年、いろんな種類の江戸時代を舞台にした時代小説が出てきているように思います。
本屋さんに行くと特設のコーナーがあったり、おすすめ本として紹介されていたりして、気になっている方も多いかもしれません😊
そこで今回は、時代小説が大好きな私の、おすすめの作品をご紹介したいと思います。
初心者の方でも読みやすいものばかりなので、ぜひ本屋さんなどで手にとってみてくださいね。
1.『ぼんくら』上下巻 宮部みゆき
まず1冊目は、宮部みゆきさんの『ぼんくら』上下巻です。
宮部みゆきさんと言えば、紹介するまでもないですが、日本を代表する作家の一人。
『火車』『模倣犯』『ブレイブストーリー』といった現代小説で有名な一方、江戸時代を舞台にした時代小説にも傑作が揃っています。
私は宮部みゆきさんの小説を読んで、時代小説好きになったほど深い思い入れがあるので、一作選ぶのがとても難しかったですが、ドラマ化もされたこの作品を選びました。
「殺し屋が来て、兄さんを殺してしまったんです」――江戸・深川の鉄瓶長屋で八百屋の太助が殺された。その後、評判の良かった差配人が姿を消し、三つの家族も次々と失踪してしまった。いったい、この長屋には何が起きているのか。ぼんくらな同心・平四郎が動き始めた。著者渾身の長編時代ミステリー。
とある事件をきっかけに、次々と長屋から人がいなくなったのを、面倒くさがりの主人公“平四郎(へいしろう)”が美少年の甥っ子“弓之助”とともに推理していくのですが、
出てくる登場人物が、江戸時代の庶民の生活や仕事ぶりとあわせて、愛おしく、丁寧に描かれています。
この本を読めば、小説だけでなく江戸時代そのものに興味を持つこと間違いなし。
そして、良い人も悪い人も含めて、それぞれの思いが伝わってくるので人間が怖いと思うと同時に、愛おしくなります。
『ぼんくら』の続編を描いた『日暮らし』(上・中・下巻)、
『おまえさん』(上・下巻)という作品も出ているので、この世界を長く楽しめますよ😉
2.『着物始末暦』中島要
2作目は中島要さんの『着物始末暦』です。
一巻目の『しのぶ梅』から始まり、2018年に十巻目の『結び布』で完結しました。
個人的にドラマなどで実写化してほしい作品です。
着物の染み抜き、洗いや染めとなんでもこなす着物の始末屋・余一は、職人としての腕もよく、若くて男前なのだが、人と深く関わろうとしない。一方、余一の古馴染みで、柳原土手の古着屋・六助は、難ありの客ばかりを連れてくる。余一の腕を認めながら、敵対心を燃やす呉服太物問屋の若旦那・綾太郎。朴念仁の余一に片思いをしている一膳飯屋の看板娘・お糸など・・・・・・。市井の人々が抱える悩みを着物にまつわる思いと共に、余一が綺麗に始末する!! 人情味溢れる筆致で描く、連作短編時代小説。
若くて男前、腕もいい着物の始末屋だけど人を避けるように生きてきた「余一(よいち)」
そんな彼が、望んではいないのに様々な問題に巻き込まれ、図らずとも解決していく様子が、もどかしくもあり微笑ましくもあります。
彼を中心に物語は進みますが、他の登場人物目線で描かれていて、同じ出来事でも様々な視点から見ることができます。
難しく考えることなくスラスラ読みたい方におすすめ。
私は、ドラマ化するならイケメン余一は誰だろう…なんて妄想を楽しんでいます😚
3.『更紗屋おりん雛形帖』篠綾子
3作目は篠綾子さん作の『更紗屋おりん雛形帖』です。
一巻目『黒染の桜』から始まり第六巻の『柴草の縁』で完結しました。
五代将軍後継問題で世間が騒いでいた頃、父を亡くした京の呉服屋の一人娘おりんは、叔父を頼り、江戸へ出た。が、江戸の店はすでに閉じ、叔父夫婦と三人で長屋に暮らし始めた。身に着けた裁縫の腕で日銭を稼ぎ、ひょんな事から日本橋の越後屋の主と関わりを持つことになった。果たしておりんは店を再興できるのか。
京の呉服屋でお嬢はんとして過ごしていた“おりん”が家族を失い、理不尽と人情に触れながら、苦節に立ち向かう様子が描かれているこの作品。
途中、あまりにも切なくなって涙なしには読めなくなってしまったんですが、段々と恋愛要素が入ってきたりして、読み手を色々な感情にさせ、楽しませてくれます。
- 歴史上の人物や史実を巧みに絡ませてくるところ
- 日本語が美しいところ
- たまに出てくる和歌が、文では書きつくせないニュアンスや心情を見事に表しているところ
こんなところも、この本の大きな魅力です。
篠綾子さんの本はこちらの記事で詳しく書いています。


4.『本所おけら長屋』畠山健二
4作目は、畠山健二さんの『本所おけら長屋』
現在十五作目まで発売されています。(2020年7月現在)
本所亀沢町にある「おけら長屋」は騒動の宝庫だ。大家の徳兵衛、米屋奉公人の万造、左官の八五郎、後家女のお染―ひと癖ある住人が入り乱れて、毎日がお祭り騒ぎ。そんなおけら長屋に、わけあり浪人の島田鉄斎がやってきて…。貧しいくせにお節介、そそっかしいけど情に厚い。そんな庶民が織りなす、江戸落語さながらの笑いと情緒にあふれる連作時代小説。文庫書き下ろし。
これぞ長屋!という様子が見事に描かれていて、とにかく面白いです。
これまで紹介してきた本と違って、男性陣が活躍(?)しますので、
重々しい雰囲気が苦手な方や、時代小説に興味がない男性にも読みやすく、おすすめしたい本です。
キャッチコピーで“落語のようだ”と評されていますが、まさにその通り。
情けない話やしょうもない登場人物も出てくるんですが、最後はうまくまとまって不覚にも涙してしまいます😂
長屋に生まれた以上、そこで生きていき、いいことも悪いことも含めてその人生を楽しむ。大事なことを教えてもらっている気がします。
5.『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ』中島久枝
5冊目は、2017年10月に発売された比較的新しい本、中島久枝さんの『湯島天神坂 お宿如月庵へようこそ』です。
現在、三巻まで出ています。
時は江戸。火事で姉とはぐれた少女・梅乃が身を寄せることになったのは、お宿・如月庵。料理に舌鼓を打って風呂に入れば、旅の疲れも浮世の憂さもきれいに消えると噂の隠れ宿だ。クセ者揃いの奉公人と、ワケアリのお客たちに囲まれて、梅乃は新米部屋係として奮闘するが―。
いきなり長編シリーズ化されている本を読むのに躊躇いがある方は、この本から始めてみてはどうでしょうか。
時代小説特有の用語があまり出てこないので、初心者でもすんなり読めると思います!
小説を読んでいる、というよりその情景が浮かんでくるのでまるでドラマを見ているような感覚といいますか。
ワケあり客が離れ宿に泊まりに来るのは、今も昔も同じなんですね🤣
6.『みをつくし料理帖』高田郁
最後にご紹介するのが、高田郁(たかだかおる)さんの『みをつくし料理帖』
言わずとしれた大人気本なので紹介するまでもないのですが、
私にとって時代小説に導いてくれたのが宮部みゆきさんなら、さらにその世界を広げてくれたのが高田郁さんなので、この本を紹介しない訳にはいきません!
第一巻の『八朔の雪(はっさくのゆき)』から始まり、十巻目の『天の梯(そらのかけはし)』で完結しました。
2018年9月には、その後を描いた特別巻も出ました。
2020年には、映画化もされます🙌



それだけ人気の作品です。
神田御台所町で江戸の人々には馴染みの薄い上方料理を出す「つる家」。店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大坂と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。しかし、そんなある日、彼女の腕を妬み、名料理屋「登龍楼」が非道な妨害をしかけてきたが・・・・・。料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、連作時代小説の傑作ここに誕生!
この本をまだ読んだことがない方は、ぜひ読んでほしい。ただそれだけです。
主人公の澪(みお)はもちろん、それ以外の登場人物もとてもとても丁寧に描かれていて、読み終わった後も愛おしくてたまらない存在です。
今でも、登場人物20人くらいならすぐに言えます!
決して器用な生き方ではないけれど、今できることを一つひとつ丁寧に、大事にする澪(みお)や登場人物から色々なことを学びました。
うまく説明できないのですが、ただ読んでほしい!それだけです😍
今回ご紹介した本まとめ
江戸時代がテーマの小説と言えば“捕り物でないと売れない”という時代もあったそうですが、
今回ご紹介した本のように、最近は、江戸時代の食や菓子、着物、文化といったものに焦点をあてた小説が、多くでています。
どの本を選ぶか迷った時、あなたが興味のあるものを扱った小説を選んでみてもいいですね。
あなたのお気に入りの一冊が見つかりますように♪


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