髙田郁さんの作品が好きなあなたも、きっと知らないであろう隠れた名作があります。
その名も「漆喰くい(しっくいくい)」
この本の編者である細谷正充さんのあとがきによると、
髙田郁さんが人気作家になる前に小説誌に発表し、そのまま本になることなく埋もれていたのだとか😲
短編小説なので、どっぷりとその世界に浸ることはできませんが、髙田さんのファンならぜひ読んでおきたいところ!ですよね。
「きずな」に収録されている他の短編も、
- 宮部みゆき
- 池波正太郎
- 山本周五郎
- 平岩弓枝
と名作家ばかり。どれを読んでも間違いなしの作品です。
髙田郁「漆喰くい」
本所の吉良邸から二里ばかり離れた村に、今にも潰れそうな百姓家で暮らす十一歳のふみと、母親のいね。病気で寝込み、食が細ったいねは、かつて一度だけ食べた「豆腐」の味が忘れられないという。
百姓が豆腐を作るのはご法度、食べることも滅多にできないと知らされるたふみは、それでも諦めきれなくて…
初出:「特選小説」2008年12月号 (辰巳出版株式会社)
「漆喰くい」は髙田郁さんの名作「みをつくし料理帖」が出版されるより前の作品なのですが、美味しそうな料理、母親のためにひたむきに生きる少女と、その少女を方法は違えど助けようとする大人たち…
澪ちゃんと同じ、優しい世界がすでにここにありました。
温かい世界に加え、短編ならではの“とんち”的な要素が加わって、読み終わったあとの爽快感といったら!
素敵な作品なので、ぜひぜひ読んでみてください😉
その他の収録作品まとめ
その他の作品とまとめるのは大変失礼ではありますが、あとの4作品はこちらです。
- 「鬼子母火(きしぼび)」宮部みゆき
- 「この父その子」池波正太郎
- 「糸車」山本周五郎
- 「親なし子なし」平岩弓枝
時代小説親子情話「きずな」の感想
「親子」という共通のテーマではあるけれど、描かれる親子は作品によってさまざま。
まさにそれが私たちが生きる世界であり、それは江戸時代も変わらないなのだなぁと実感しました。
亡くなった後も子どもの心配をする母親、生涯会うことはないけれど確かな絆が存在する父と息子、
裕福な生みの親と、貧乏ながらも大好きな育ての親との間で悩む娘、
子ども離れできない母親とそんな母親に苛立ちながらも甘える放蕩息子。
細谷さんによるあとがきに記された「よくも悪くも、切っても切れないのが、親子の絆なのだ」という言葉が、まさにこの本の全て。
子どもを育てる立場になった今、私は息子と、どんな親と子の関係を作っていくのだろうか…そんなことがよぎり不安になりながらも、名作家たちの物語に触れて、楽しませてもらいました。
髙田郁さんの貴重な短編「漆喰くい」も収録されたこの本。ぜひ、手にとってみてくださいね😌


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